さる2月26日にトヨタL&Fカスタマーズセンターで実施された配車・安全管理研修(関東地区)に参加した小林信二さん(㈱バンテック・運輸事業本部 集中配車センター勤務)から、研修の感想や配車担当者としての心構えなどをお聞きしました。
──小林さんは配車管理の経験が厚く、ドライバーとの
会話など、具体的な発言をされていましたね。
小林 私は、高校を卒業してすぐトラック運転の仕事を始めたので、ドライバー経験も長いのですが、今は、運行管理者の資格をもって安全管理と協力会社の安全指導の仕事をしています。
実を言うと、ハンドルを握って仕事をしたいという気持ちは、今でも強いのですよ。
ですから、ドライバーの立場を踏まえたうえで、皆さんと話し合いができた面はあると思います。
──小林さんぐらいのベテラン管理者になると、研修会に出ても役に立つことは少ないでしょうか?
小林 いえ、とても参考になりました。私は、横浜輸送という社名の頃から当社にお世話になっているのですが、やはり、一つの会社に長くいますと視野が狭くなってしまうこともあるので、他社の方はこんな考え方をするのか?という点は勉強になりました。
また、ベテランは自分の仕事のやり方が確立してくるのはいいのですが、今度はそれを変えることが難しい面があります。そして、過去には良かれと思ってやっていたことが時代遅れというか、今の実情に合わないこともありますよね。様々な意見を聞くと気づくことがあり、自分自身の仕事の進め方を改善するよい機会になったと思います。
それに、「私が困っていることは、やはり各社さんとも同じように悩んでいるんだな」と知って、非常に共感する面もありました。今日の会議でも、たとえば下請けなどの問題点は、すぐに解決するのは難しいという話でしたが、結論をもらうのではなくヒントをもらうことができただけでも、大きな進歩です。
解決すべき方向性が見出され、自分なりにステップを上げていけるなという希望を感じました。こんな手法で取り組んでいると各社から聞いたことは、おみやげとして持って帰って、自分なりに試してみたいと思います。
安全のために行うべきことは本質的には同じですから、基本的な対策・ルールは共有していけるものが多いのです。
──日頃からドライバーとの対話を重視されているとのお話でしたが。
小林 終業点呼などでドライバーの話を聞くことが重要です。自分が配車した車の運行については、「どうだったの」と聞いておく責任があると思うのです。
出先で条件が変更されていたり、ドライバーが疑問に思うことがなかったか、素直に聞くことがまず大切。そして、必ず事実関係を調べて自分なりに解決策を考えるなど、何らかの返答をしてあげること。
そのままにしていたら、ドライバーは「話しても無駄だ」と思ってしまい、何も教えてくれなくなりますからね。日々の対話の積重ねがドライバーとの信頼関係につながると感じています。
また、事故やトラブルなどで個別に指導する必要があるときも、「こうしろ、ああやれ」と一方的に解決策を押し付けないようにしています。自分自身がドライバー時代にも、押し付けられるのは抵抗がありましたから、そう感じるのです(笑)。
「(再発防止には)僕自身は、過去にこんなやり方で改善してきたけど、君はどう思う」「どうやっていきたいのかな」と聞いて、ドライバーの発言を引き出してから、「だったら、こういうやり方もあるよ」等と情報を提供して努力を促すようにしています。
──アルコールや飲酒習慣の問題についても、かなり話題になったようです。
小林 やはり、飲酒運転は絶対にやってはいけない事ですからね。
検知器でチェックすることは単なるプロセスの問題でしかなくて、結局、重要なのはドライバー個々の自覚の問題です。検知のとき何とかアルコールが出なければ……という意識ではなくて、酒気帯び運転は絶対にできないと考えたら、前の日の酒をコントロールするはずです。
自社・他社を問わず、こうした意識をもつドライバーに育てていかないといけないし、逆に言えば、飲酒の自己コントロールができない人は、もうドライバーとして失格だということでしょう。
以前、巡回指導をしていた協力会社で聞いた話ですが、朝のチェックで飲酒検知されて運行をストップされたドライバーに対して、その会社のオーナーが「今、検知されたということは、それ以前の通勤時に酒気帯び運転で来たということ。絶対に許されない。通勤時も会社の管理下なんだから、飲酒運転をするドライバーは当社にはいらない」と言い切ったそうです。
それぐらい厳しい意識で指導しなければ、と今日も改めて痛感しました。
──ありがとうございました。
【取材・構成/シンク出版 編集部】