「物流企業の労使間トラブル防止」について理解を深める

関西地方の輸送協力会社に対する「合同説明会」を開催(その2)

【 小山 雅敬 三井住友海上経営サポートセンター長の講演】

 「労使間トラブルの防止と危機管理」 (その1)より続く

 

板書して説明する小山氏
板書して説明する小山氏

■無事故手当から評価手当に 

小山 無事故手当という名目で賃金のなかに上乗せして支払い、事故を起こすと賃金から引くという形式をとっている事業者も多いようですが、これらの方策にも問題があります。

 

 事故を起こしたドライバーへの対処としては、賃金から損害賠償額を一方的に天引きして、トラブルに発展したり訴えられる例が多くあります。

 

 これも、事故分担金規程や賞罰委員会の判定基準を作って対処すべき問題です。運転者に過失があれば、損害賠償額の25~30%ぐらいまでを上限に負担させるのが標準的な姿であり、妥当な範囲で毎月弁済してもらう方法をとることができます。 

 

 ただし、本来協定抜きに賃金から控除できるのは税金と社会保険だけであり、法的には従業員の給与から勝手に弁済金を引くことはできません。事故分担金規程以外に賃金控除規や、立替弁済金といった項目を別途作成する必要があります。

 さらに、弁済方法申出書類などを本人から出してもらい、給与から分割して弁済したいという申し出をしてもらうなどの手続きがいるのです。

 

 給与の中の手当は無事故手当のような項目ではなく、「評価手当」にして、事故の有無については車両・商品・設備を含む事故をチェックし、コスト意識やあいさつ・マナー、車両管理などの総合的な評価をする手当に一本化すると、運転者のモチベーションアップにもつながると思います。

 

 いずれにせよ、すべて文書化して残し、規程を変更したら選挙で選ばれた代表と協定を結ぶということが危機管理上は重要です。これさえしておけば、訴えられるようなことはないのです。

実務上の危機管理情報を簡潔に説明

 続いて、町田慶太事務局長(サントリーロジスティクス㈱)が、プロの運送会社としての実務的な危機管理情報について、代表的な10項目を質問形式で簡潔に紹介しました。

 

町田 私の方からは、実務の中でトラブルなどが発生したときどうするかという問題をご説明しますので、皆さんはまず、設問を見て正解と思うものを考えてください。
明日からドライバーや配車担当者に指示できる実務的な対処方法について、ご紹介します。


●設問:高速道路を走行中タイヤから発火した場合、どこに止めるか
【正解】 不用意に路肩に停車すると山火事などを誘発する危険があるので、場合によっては中央分離帯に止める。
●設問:高速道路でエンジントラブルが発生したときどこに連絡するか
【正解】 ディーラーに連絡すると20万円近くのレッカー代を請求される。保険会社の牽引サービスを契約していないか確認し、契約している場合は保険会社に連絡する。

●設問:鉄道の陸橋手前で高さ制限のため立ち往生した場合どうするか

【正解】 迷わず110番通報する。警察官が安全に渋滞を緩和し後退を誘導してくれる。衝突しなければ、切符は切られない。指導ですむ。
●設問:伝票ミス等で数%の過積載が発生し走行中に発覚したら!
【正解】 倉庫に戻らないで、1割未満の過積載でも必ず積み替え車を持っていって過積載分だけ積み替える。
●設問:入庫倉庫で残酒によるアルコール検知があった場合、代替車両を確保したあとドライバーにどのような指示を出すか?
【正解】待機させ、わずかでも酒気帯び運転はさせない。
●設問:課税倉庫と未納税倉庫で守るべき配車の順番は?
【正解酒税法上の順序を守り、出荷配送は未納税倉庫から。
●設問:燃料漏れ、オイル漏れは何かいちばん多いか?
【正解】満タン給油、ホース劣化、ウィング開放ジャッキのオイル漏れが盲点。 ──など

 

 どれも明日からすぐ役に立つ内容でした。

 

 なお、飲酒運転防止に関しては、物流技術研究会がシンク出版とともに開発したドライバー向けの教材『「飲酒習慣の危険度」をチェックしよう』を紹介し、飲酒習慣を自己チェックさせて、日常的にコントロールする安全教育資料として活用できることを説明しました※下を参照 )。

 
 また、町田氏は「指導・監督面」では、常に記録をきちんと残すこと、ドライバーとのコミュケーションを絶やさないことが非常に重要であると強調しました。

経営者は法律を知って危機管理を

 最後に、宮本秀俊副会長(エービーカーゴ西日本㈱)が閉会のあいさつに立ち、経営者の立場から危機管理の重要性についてまとめました。


宮本 今日のお話を聞いて、 『法律は弱い者の味方ではなく、法を知るものの味方である』ということを改めて痛感した次第です。

  我々、経営者の立場としては「給与体系のあり方」「36協定のあり方」「改善基準告示について」など、改めて勉強しておく必要があると思いました。


 町田事務局長のお話は、物流技術研究会の実施している配車担当者研修やドライバーインストラクター研修のカリキュラムの中から抜粋した内容です。当社のドライバーも研修を受けておりますが、イザというときには講師やインストラクターとしてこうしたお話ができると思います。

 今後はドライバー不足の問題も現実化し、物流業界は厳しい時代を迎えると思いますが、物流技術研究会では、ドライバーの教育訓練と危機管理意識の共有こそ業界を成長させる礎であると考えて、今後も研修やこうした場を借りた情報提供に努めていきたいと思います。

 

【輸送協力会社・合同説明会データ】
〈日時〉
 2012年1月24日(火)13:00〜15:15〜
〈場所〉
 三井住友海上大阪淀屋橋ビル16階ホール(大阪市北浜北浜4-3-1)
〈説明会参加者〉
 79社、104名

 

【取材・構成──シンク出版

※物流技術研究会の安全教育資料


「飲酒習慣の危険度」をチェックしよう
 飲酒運転の根絶を目指すとともに健康的な飲酒習慣の形成を促す教材です。
 
 ドライバーが研修を受けながら、或いは倉庫での待ち時間などに、「飲酒習慣の危険度」「アルコール依存症の危険度」「飲酒運転の危険度」の3項目を自分でテストできます。
 巻末の、飲酒習慣目標記入欄(提出欄)は、運転者への「指導・監督の指針」に基づく教育記録資料としても活用できます。

 詳しくはこちらを参照

物流技術研究会公式サイト