「物流企業の労使間トラブル防止」について理解を深める

関西地方の輸送協力会社に対する「合同説明会」を開催(その1)

 物流技術研究会では、さる1月24日(火)、関西地区の輸送協力会社の経営者、総務担当者を対象とした合同説明会を開催しました。


 昨年の8月27日、神奈川県で関東地方の協力会社の配車担当者などを集めて開催した「飲酒運転撲滅合同説明会」に引き続き、荷主貢献活動の一環として実施したもので、今回は、賃金など労使間トラブル防止セミナーをメインとして、物流企業の危機管理面での重要情報を説明しました。

 

 合同説明会は午後13時から15時15分まで開催され、計79社の協力会社から104名もの方が参加する盛況ぶりでした。

 

賃金・労使問題の危機管理意識をもち、実務知識を共有しよう

 説明会の冒頭で、高階信太郎副会長(キリン物流㈱)が開会の挨拶を行いました。


高階 今回は、物流技術研究会の推進部会の活動として、協力企業の皆様に2つの角度から情報提供をさせていただきたいと思います。

 一つは、近年、訴訟やトラブルが多く問題になっている物流企業の就業規則と賃金体系のあり方について、この問題に詳しい小山雅敬氏の講演をお聞きします。

 

 さらに後半では、物流技術研究会が研修などを通じて情報提供に努めている内容ですが、事例に基づいた物流事業の実務対処上の具体的なポイントについて、ご説明します。

労使間トラブルを防ぐための重要ポイントを指摘

 続いて、運送事業への経営問題に詳しい三井住友海上経営サポートセンターの小山雅敬センター長が、実際の相談事例を踏まえて、最近急増している労使間トラブルの実態と危機管理対策について解説しました。

 

【テーマ】

 「労使間トラブルの防止と危機管理

 ~企業発展のための就業規則と賃金体系~

 

 小山氏は、まず、違法な時間外労働をさせていると労基局から処分されたり、未払いの残業手当を支払えと運転者から訴えられて、多額の支払い命令を受けているようなケースが多いことを指摘しました。

 その多くは就業規則や賃金体系に問題があり、運送会社では、体系や規定を見直すことがリスクマネジメント上きわめて重要であることを以下のようなポイントでわかりやすく説明しました。

 

■36協定は選挙した労働者代表と結ばないと無効に

小山 運送会社の相談で多いのは、時間外労働時間が36協定(※)の協定を超えているとされたケースです。

  たとえば、社長と会社が労働基準法違反で書類送検されたケースでは、時間外休日労働に対する協定について、選挙による労働者代表と協定を結ばずに会社が指名した者と協定していたため、協定は無効とされ、「違法な時間外労働をさせている」とされました。

 私が運輸会社を訪問した限りでは、労働者代表を選挙で選んでいる会社は非常に少ないと思います。しかし、このような36協定では、もし監査に入られたときには、通用しないということです。

 

 また、「運転業務に関わる手当」が支給され、会社は「これが時間外労働手当だ」と口頭で説明していまたが、就業規則に明記されていないため、労基局からは時間外手当とは認識されなかったという例もあります。

 

■運送事業の実態にあった賃金体系に

小山 時間外労働の計算方法にも問題があります。

 「他社より月給が多ければ文句はないだろう」という観点で賃金を決め、その内訳を配慮していないため、残業手当の根拠となる基礎賃金が高すぎて、多額の時間外労働手当を請求された例があります。

 また、歩合制で賃金を支払っていたものの、労働基準監督署から未払い残業代の支払い勧告を受け、2千400万円の賃金をさかのぼって支払った例もあります。

 

 運送会社の時間外手当は、倉庫や事務所などの拘束時間が一定で時間外残業が少ない人たちと運転者を同じような基準で定めること自体が間違っています。

 労働時間の長い運転者は、時間外手当の基準となる基礎賃金は低めに設定します。

 

 また、労働時間は長くても売上の低い運転者もいますので、運行時間外手当を「売上マイナス燃料費」などの基準を決めて積算したり、立ち寄り店舗数や距離などを勘案して柔軟に決める規定を作成して実態にあう賃金体系に変えて行く必要があります。

 賃金規程に賃金改訂の表記をして、経営環境や運行実態にあわせて見直すことが重要です。 賃金改訂をした場合はその件を明記することも重要です。

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※3 6協定=時間外労働・休日労働に関する協定
 この協定は、従業員の過半数代表者(選挙による)または労働組合の同意を得ることが前提となる。
 「労働者を代表するものを使用者が一方的に指名している場合」「一定の役職者が自動的に労働者代表となることとされている場合」などの場合は、締結した36協定は無効とみなされる。


 

【取材・構成──シンク出版

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