配車・運行 安全担当者研修会(その1)

 平成25年3月23日(土)、京都市下京区の三井住友海上火災保険㈱ 京都ビルを会場に、物流技術研究会主催の「配車・運行・安全担当者研修会(西日本地区)」が開催されました。

 

 2月23日に東京で行われた研修に続いて行われたもので、配車・運行・安全担当者として知っておきたい心得や、実務対処を学んでいただく目的で開催され、会員事業所の配車担当者や安全担当者など8社から13名が参加しました。

配車担当者の使命とあるべき姿

 はじめに、「配車担当者の使命とあるべき姿」と題して宮本秀俊副会長(エービーカーゴ西日本㈱)が講義を行いました。
 宮本氏は、物流業界の現状を踏まえ、単に配車をするというだけでなく、物流会社の屋台骨を背負い、ドライバーの人生をあずかっているという自覚を持って業務に当たってほしいとその重要性を訴えました。

 

■ドライバーの確保が難しくなっている

宮本:物流業界には数万社の企業がありますが、そのほとんどは、20台以下の小さな会社であり、経営が厳しい状況です。

 今、国土交通省は業界を小さくしていこうとしています。後で三井住友海上の方からもお話があると思いますが、コンプライアンスを守れない会社は業界から撤退を余儀なくされる情勢となっています。

 以前は汗を流せば流すほど稼ぐことができ、ドライバーはある意味で魅力のある職業だったのですが、今は運賃も厳しく、コンプライアンスを守るために運行管理もきちんとしなければならない。中型免許などの問題もあり、ドライバーを確保するのは難しい時代です。

 

 ですから、皆さんにはドライバーを心から大切にして頂きたい。「仕事を出してやっている」「うちが食わしてやっている」という意識や態度があれば、いずれしっぺ返しを食うでしょう。

 ドライバーは、一歩間違えば血まみれになるような現場にいるわけです。そんな大切な人材に対しては、配車の方も誠実に接していただきたいのです。

 

 下請けのドライバーから事故などの連絡があったとき、「自分の会社に連絡しなさい」で終わっていませんか?そんなときこそ、配車担当者の真価が問われています。きちんと事故処理の指導をして、「会社にはこちらから連絡をしてあげるから、君はこうして現場の安全対策をやりなさい」と言ってあげられるようになっていただきたい。

 そういった姿勢から、ドライバーとの信頼関係が生まれます。

 

■コンプライアンスとは、まず、

 人としての礼儀を守ること

宮本:「コンプライアンス遵守」とよく言われますが、本当に守ろうと思ったら法律を知らないと守れるものではありません。改善基準告示や36協定など労働関係も知っておく必要がありますし、貨物運送事業法や道路交通法の知識も必要です。

 たとえば、悪質違反などをして運行管理が不適切であれば事業停止処分が与えられます。平成25年度以降は、さらに基準が厳しくなる見通しです。

 また、ある一定の交通事故が発生すれば、運輸支局に報告する義務があります。どんな事故であれば報告すべきなのか、知らなかったでは済まされません。

 さらに、運転者に「指導及び監督の指針」にそった教育をする必要がありますね。教育すべき内容も、当然、把握しておかなければならないでしょう。

 

 こうした知識をすぐにすべて身につけるのは、確かに難しいかも知れない。

 ただし、コンプライアンスで忘れてはいけないこと、私はそれは「世の中で守るべき礼儀を守る」ことではないかと思います。

 「きちんと挨拶ができない」「ドライバーに高飛車に接する」「仕事を与えてやっているという上から目線」──これらはすべて、コンプライアンス違反です。

 ドライバーも1人の人間です。ドライバーの気持ちに添って大切にしようという姿勢からコンプライアンス遵守は始まるのです。

安全管理の心得と実務対処

■危機管理能力を高めよう

 次に「安全管理の心得と実務対処」として丸山利明会長(タカラ物流システム㈱)より、配車・運行・安全管理担当者として知っておきたい、事故やトラブル発生時の対処法が紹介されました。

 

・高速道路で車両火災が発生した際の心得

・レッカー手配の知識(保険特約の活用)

・ガード前で立ち往生した際の対処

といったトラブル対処法や、

 

・3%程度の過積載への対処

・課税倉庫と未課税倉庫の区別

・アルコール検知ドライバーへの指示

などの法令遵守事項

 

そのほか

・派遣労働者の労働災害

・居眠り運転防止対策

・ドライバーからの納品トラブルの連絡

・踏切事故の社会的責任

など、最近発生した事故なども取り入れて、15項目にわたって危機管理対処法が紹介されました。

 

丸山:ドライバーから連絡があれば、彼らの不安を取り除いてあげることが重要です。ドライバーは何もないときは連絡してきません。不安があるから電話してくるのです。

 ただし、納品破損トラブルなどの可能性の連絡があれば、荷積みまで遡ってドライバー自身に解決させることが重要です。荷の遅れなどを気にして配送を優先すると、ドライバーは今後も事務所に対処してもらうことを期待するようになります。トラブルの可能性に気づきながら配車や事務に責任を転嫁しようとするのです。

 配送が遅れても構わないので、ドライバー自身に荷積みの責任者との間でトラブルを解決させる事が重要です。そのドライバーは二度と荷物破損などが不確かな状況で配送するようなことはなくなるからです。

■踏切事故防止は指導・監督の重要なテーマ

 また、最近発生した「山陽電鉄踏切事故」に関しては、多大な損害賠償責任が発生するだけでなく、運輸局への報告事故となり事業所が特別監査を受けるなど企業にとって存続の危機となることを訴えました。

 

丸山:タカラ物流システムでは、さっそく、この事故の情報をインターネットからダウンロードして資料を作成し、全ドライバーを集めて特別指導を行い、

・踏切の遮断棒が降りても、

 構わず跳ねあげて脱出すること

・踏切の先に前車がいた場合、その車を押してでも脱出すること

・列車に危険を知らせる非常ベルは迷わず押すこと

などを確認しました。

 

 たとえ遮断機のポール破損や他車との物損事故となっても、列車との衝突による重大事故を回避することがもっとも重要であり、それがプロとしての社会的責任であることを自覚してほしかったからです。

 教育は15分程度でしたが、その場で資料に全員の署名をもらい、指導記録として事業所で保存しました。

 踏切事故防止は、国土交通省の「指導・監督の指針」にも記載がありドライバーが認識すべき重要な内容ですから、こうした事故の機会をとらえて意識づけることは、企業防衛上も大切なことだと思います。

 

運送業の労働時間に関するトラブルと危機管理

 休憩を挟んで、三井住友海上経営サポートセンターの竹内靖人氏が、物流業界のリスク対策を支援する立場から、「運送業の労働時間に関するトラブルと危機管理」と題して講演を行いました。

 今後、運送事業者に対する監査・処分方針の改正が予定されており、業界を取り巻く状況は厳しくなっていることを強調しました。

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