配車・運行 安全担当者研修会(その2)

運送業の労働時間に関するトラブルと危機管理

 三井住友海上経営サポートセンターの竹内靖人氏は、今後、運送事業者に対する監査・処分方針が改正され、運送事業者に対する安全確保の要求はますます厳しくなっていくことを強調しました。

 

■「更生」から「排除」の論理に

竹内:昨年発生した関越道のバス事故の影響もあり、国土交通省の自動車運送事業者に対する監査・処分の方針が、平成25年度に強化される見込みです。

 現在「有識者会議」という名目の検討会が行われ、大筋の方針が明らかになっていますが、監査や処分が厳しくなるだけでなく、基本的な考え方が大きく変わってきています。

 

 というのは、従来の国土交通省では事業者に対する「更生」という考え方が基本になっていました。事故や違反を起こした事業者に処分・指導をするのですが、「立ち直るチャンスをあげますよ」ということで更生して安全性をアップしてほしいという姿勢でした。

 しかし、今後は「排除」という言葉が全面に出て、「安全性の低い事業者には業界から出て行ってもらおう」というスタンスです。「悪質な業者」というキーワードで事業者のデータベースを作る作業も進んでいて、重点的に監査を行い「排除」していくという姿勢が示されています。

 

■即日処分ができるように権限を強化 

竹内:さらに、監査を行う監督官の権限を強化することも検討されています。

 今までは、監査の内容を検討して処分が出るまでには一定の時間がかかるのが通例でしたが、今後は、監査の現場で「悪質な違反」や安全性を阻害するような事実が判明した場合は、監督官の権限により、即日に処分を下せるようにするというものです。

 間違いなく、今後は営業停止処分が増えると見られています。

 なお、労働基準監督署と運輸局の間には相互通報制度があり、労働時間などの問題で労基署に通報があり調査した場合は運輸局にも連絡がいき、事故や違反で運輸局が監査した場合、労働時間などの情報が労基署に届きます。

 こうした動きもますます積極的になると見られています。

 

■コンプライアンスを守れる企業だけが生き残る

竹内:大事故が相次ぎ、国土交通省も批判の矢面に立たされ、「重大事故を何とか防止したい」と考えるなかで、

 「コンプライアンスを無視している会社が存続できる状態は異常である」

という認識がはっきりしてきています。

 そして、今後はコンプライアンスを守れる企業だけで競争をしてもらおうということで、「排除」という方針が明確になってきたのだと考えられます。

 

■居眠り防止策のほとんどは効果がない

竹内:なお、協力会社などのドライバーの運行リスクとして、過労・居眠り運転の危険があると思いますが、改善基準告示を踏まえて前日の拘束時間・休息期間や運転時間の把握が重要であることを肝に銘じていただきたいと思います。

 中小運送事業者の場合は、うまく行っている企業でも利益率2%ぐらいで経営しているわけで、大きな人身事故を起こせば経営が立ちいかなくなるのは明確です。協力会社を守るためにも、配慮が必要です。

 

 なお、ドライバーが実践している眠気防止策のほとんどが効果はないということはご存知でしょうか?

 つねる、身体を叩く、窓を開ける、ガムを噛む──これらは専門家の意見では、ほとんど効果はなく、わずかにコーヒーなどに含まれるカフェインは眠気を催す物質をブロックする効果があるそうです。

 居眠運転を防ぐためには仮眠しかないということで、10分~15分の仮眠でも効果があります。4時間運転に30分の休憩を定めた改善基準告示には合理的な理由があるということに気づきます。ぜひその辺りも含めて、告示の内容を頭に入れるように努めてください。

協力会社に対する運行指示のポイント

 続いて実際に起こった追突事故事例をもとに、グループで事故原因と対策を話し合う事故事例研究が行われました。


 まず、町田慶太事務局長(サントリーロジスティクス㈱)より、過去に名阪道で発生した事故の事例が発表され、事故を起こした2次下請け(スポット契約)のドライバーからのヒアリングや、就労状況とデジタコのデータ、また1次下請けの協力会社から提出された事故対策書などが紹介されました。


 参加者は3グループに分かれて、2次下請けの協力会社の運行状況に問題点はないのか、1次下請けの協力会社から提出された事故対策書に問題はないのか等について話し合いました。

■タコグラフを見ると居眠運転の疑いが

 1次下請け会社の事故対策書は、原因が「前方不注意」であり、防止対策は①2次下請け会社の一時取引停止、②「前方への危険予測と安全確認の徹底」といった通り一遍のものでした。

 これに対して、各グループで話し合った結果、次のような意見が発表されました。

・「高速なのにデジタコの波形が波打っているので、居眠運転の疑いがある」

・「点呼後出発して、すぐに仮眠しているのがおかしい。前日の業務が大変だったのか」

・「無理な配車を指示しているのではないか」

・「居眠運転を起こすような配車であれば、元請け、一時下請けにも責任があるので、2次下請けを取引停止にするのは解決策にはならない」

■過酷なスケジュールと運行指示の問題

 続いて、今度はドライバーの前日からの細かい行状況の資料が配布され、ドライバーの勤務にどのような問題があるか(法令違反があるか)を話し合いました。
 その結果、

・「1日の拘束時間が大幅にオーバー」

・「連続運転時間、6時間が2回もある」

・「休息期間が2時間にも満たない」

・「自社から出ているのに、なぜ運行管理者が対面点呼をしていないのか」

・「こんな異常な配車でも、ドライバーが受けざる得ない実態がある?」

など、ドライバーの過酷なスケジュールとともに、運行管理者のいない状況が指摘されました。


 こうした話し合いを通じて、真の事故原因は、無理な運行が行われていることであり、下請けの協力会社を含めた運行管理教育の徹底が再発防止策につながることが確認されました。

 また、町田氏は実際にあった事例であることを踏まえて、実運送をした事業者の運行管理補助者の育成や、1次下請会社が実運送の運行実態を把握するように教育して、現場のパトロール(訪問指導)などを実践していることを紹介しました。

 

■キーワードは「思いやり」

 最後に町田氏は、「ドライバーを思いやる心」がもっとも大切であることを再確認してほしいと結びました。

町田:配車・安全を管理する人たちにとって、コンプライアンスの徹底が重要であることがご理解いただけたと思いますが、そのためのキーワードはやはり「思いやり」ではないかと思います。

 配車マンの「相手を思いやる心」がなくては、人間的な運行もできません。

 「われわれがドライバーを支えるんだ」「運送業を盛り上げていくんだ」という気概を持って、今日の研修を明日からの配車業務にいかしてください。

 

アンケートでも好評を博す

 今回の配車・運行・安全管理者研修会も、大変好評を博して終了しました。

 講習終了後に回収したアンケート結果でも、8割近くの参加者が大変役に立ったという感想を残してくれました。

  研修アンケートの内容について、詳しくは、こちらを参照してください。

講習のあとは懇親会で親睦を深める

 研修メニュー終了後には、懇親会が開かれ、和気あいあいとした雰囲気の中、参加者同士が名刺交換をしたり、情報交換を行なって親睦を深めました。


 普段は電話でしか知らなかった配車マンが顔を合わすことで、格好の交流の場となりました。

【配車・運行・安全担当者研修会(西日本地区)データ】

 

<日時>

平成25年3月23日(土)

<場所>

三井住友海上火災保険㈱ 京都ビル

<参加者>

8社13名(他にスタッフ・見学者9名)

<総合司会・進行>

 阪元勝明氏(アサヒロジ㈱)

 

【平成25年3月29日更新 取材・編集 シンク出版㈱

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