ドライバーインストラクター養成研修会を開催(26年6月)

 物流技術研究会では、さる6月8日(日)および15日(日)の2週にわたってドライバー・インストラクター研修を開催しました。

 

 西日本地区の研修はアサヒロジ(株)箕面営業所(大阪府箕面市)、東日本地区はサントリーロジスティクス(株)梶が谷物流センター(神奈川県川崎市)が会場となりました。 

 (※今回は、西日本地区の取材を中心にご報告します)

 

■コンプライアンス・法律に強いドライバーに

 開会の挨拶として、まず宮本秀俊会長(アサヒロジ㈱安全企画推進室長)が、研修の主たる目的について話しました。

宮本会長 トラック運送業界を取りまく状況は非常に厳しくなっています。ドライバー不足や燃料の高騰だけでなく、当局の監査が厳しくなり、コンプライアンスを守れない運送事業者は業界から出て行ってほしいと言われています。

 こうした時代だからこそ、物流技術研究会としては、我が社や協力会社の皆さんが業界をひっぱる会社となっていきたい。

 

 運転をする皆さんも「上から言われたことをやっていたらよい」という時代ではなく、コンプライアンス(法令順守)について、また安全確保についてもよく理解している、礼儀もわきまえている、プロとして人に教えることもできる──といったドライバーになっていただきたいと思っています。

  

 今回は、新たに左折の講習を取り入れました。また従来通り重要なのは点検ですが、点検試験などに失敗しても構いませんので、研修の仕方を覚えるということに主眼を置いて下さい。事業所に戻って自分が教える方法を身につけることが大切です。

■1人で実施できるポイントを踏まえた点検実技

 古谷講師
 古谷講師

 続いて、「点検模範実技・試験」を受けました。

 

 点検実技では、まず、古谷俊之講師(エービーカーゴ西日本(株))が、「1人でできる車両の一回り点検」のやり方について簡単に説明し、澤井和樹講師(ティービー(株)がてきぱきと実演しました。

古谷 会社によっては2人グループで点検しているかと思いますが、物技研の点検は1人でどこでも実施するということを主眼にしています。競技用の点検とは違いますので、形式にとらわれないで、何を見ることが大切かという点をしっかりと覚えて帰ってください。

 

 その後4グループに分かれて、古谷講師、澤井講師、吉村隆司講師(エービーカーゴ西日本㈱)、森井満夫講師(同左)、野村康志講師(ティービー(株))の指導のもと、一人ひとりが実際に点検を実施するなかで、素早く重要な点検を実施するポイントを習得しました。

 試験では、ナットを緩めたり、後輪の隙間にペットボトルを置くなど不具合を仕込みましたが、皆さんは的確に対応していました。

■とくに足回りの点検漏れが危険であることを強調

 タイヤ・ボルトの点検を特に重視
 タイヤ・ボルトの点検を特に重視

 点検実技のあと、丸山講師がワンポイントアドバイスを実施しました。

 

丸山 とくに、注意してほしいのはタイヤやボルトの状態。タイヤの中身をドライバーがどうこうできるものではないけれど、火災の危険は知っておく必要があります。グリースが溶けてベアリングが焼き付き火災が発生したら消火器で消すの困難です。タイヤが異常に熱いと感じたときは、ぜひ整備工場に連絡してください。

  また、JISとISOボルトの混在などで間違った組付けやナットの緩みが発生すると、ホイールに大きな力がかかりヒビが入ります。気がつかないまま高速走行をしていると、落輪事故につながる危険があります。

■危険回避体験で知覚反応時間を知る

 休憩後には、2班にわかれて「危険回避・左折実技」と、「車両感覚(リアオーバーハング・狭路バック)」研修を互いに交代して体験しました。

 

 危険回避研修では、専任講師の青柳修治チーフインストラクター(JR西日本マルニックス㈱)の指導のもと、時速30キロと時速40キロの二通りの速度で走行し、擬似信号機による合図で危険回避行動を体験しました。

 この研修では、人間の脳内で発生する知覚反応時間を要するため、瞬間反応は物理的に無理であること、スピードを落とすことで判断・操作の余裕が生まれることを学びました。

 

青柳講師 わずか時速10キロでも大きな違いがあるということをわかっていただきましたか? 夕方雨が降ってきてちょっと見えにくいなと感じたときなど、「最高速度は50キロだけど40キロに落とそうかな」……とそういう判断ができるのがプロのドライバーです。少しの配慮で確実に事故から遠ざかる知恵です。

 

 このあと、シートベルト非着用の危険について車の後部座席に座って体験しました。

■いかに減速が重要かを体得させる左折実技

 続けて行われた「左折実技」は今回から導入された体験です。

 

 パイロンで作成した擬似交差点をスピードを出して接近し、その後左折するのですが、そのとき停車してある車の後部ガラスに張られた「質問」が何かを読む必要があります。

 これは、左折時にいかに左に寄る必要があるか、また徐行とは「時速5キロ」程度に減速することを体で覚えてもらおうという体験です。

 きちんと減速したドライバーでないと、左折時になかなか文字で書かれた問題を視認できません。

 

丸山講師 確認の余裕を生み出すためには、いかに徹底的に速度を落とすことが大切かを理解してもらえましたか?

■勘だけでなく、理屈を知って接触事故を防ごう

 車両感覚の実技では、トラックのリアオーバーハング(車体後部のはみ出し)の大きさを実体験しました。

 

 まず、受講者自身に自分が考えるリアオーバーハングがどういった軌跡を描くか示してもらった後に、大型トラックのハンドルを左一杯に切って前進移動したときの右後部の軌跡を測りました。

 

 数メートルも大きくはみ出すと予測した人もいましたが、いちばん大きくはみ出した所で1m10㎝程度と、予測したほどはみ出しませんでした。さらに、ハンドル操作を1回転にすると、はみ出し幅は45㎝ほどになりました。

 このことから、講師が「傾いた路面でのウイングのはみ出しを足して車体と壁などの間隔が1.5m程度あれば、思い切りハンドルを切っても大丈夫です。逆に狭いところから出て行くならハンドル操作を少なくするということを意識してください」と強調しました。

 この後は狭路バックです。大型トラックを1回の切り返しで安全かつスムーズにバックさせて狭路に進入する方法の体得です。

 

 トラックドライバーは、ともすれば勘と経験そして度胸でバックしています。

 しかし、このバック方法は、必ず左右のミラーに壁など後方障害物が映りこむようにしてからバックする方法なので、ドライバー自身が安心してバックできるという利点があります。

 「切り替えし位置のポイントを覚えるまで戸惑うかも知れませんが、この理屈を覚えると、どこでも(乗用車であっても)安全にバックできます。ぞひ、練習してください」

■居眠り運転の恐ろしさなどを強調

 実技研修終了後、丸山講師より、実技講習の補足説明と「ドライバーが知っておきたい安全管理の心得・実務対処」の講習が行われました。

 

「高速道路で車両火災が発生した場合に、どこ

 に停車するか」

「高速道路で車線変更をして追突されてしまっ

 たら、自車の過失割合は何割?」

「居眠運転で事故を起こしたら懲役15年の刑

 の可能性もある?」

 

──など、 実際に発生した事故やトラブル事例などを挙げながら、プロドライバーとしての対処方法を解説しました。

■ドライバー講師スタッフ(インストラクター)に聞く

前列左から古谷俊之氏、森井満夫氏、澤井和樹氏、後列左から吉村隆司氏、野村康志氏
前列左から古谷俊之氏、森井満夫氏、澤井和樹氏、後列左から吉村隆司氏、野村康志氏

※今回は研修の合間に、講師スタッフ(現役のドライバー)の皆さんに講習についてお話を伺いました。

 

編集部 物流技術研究会の研修の大きな特徴は、丸山さんや青柳さんなど専任講師だけでなく、現役ドライバーの皆さんが講師として実技講習などを実施していることだと思います。

 休日出勤して講師を務めるのは大変だと思いますが、いかがですか。

 

講師一同 ドライバーの皆さんと学ぶのは、楽しいし「やりがい」がありますから、苦になりませんよ!

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【ドライバーインストラクター養成研修データ 西日本】

 

<日時>

  平成26年(2014年)6月8日(日)

<場所>

  アサヒロジ(株) 箕面営業所

<参加者>

  受講者 16名

  スタッフ・見学者 16名

<講師・インストラクター(敬称略・順不同)>

  宮本秀俊(アサヒロジ)

  丸山利明(タカラ物流システム)
  青柳修治(専任講師・JR西日本マルニックス)

  上野正夫(サントリーロジスティクス)
  森井満夫(エービーカーゴ西日本)

  古谷俊之(エービーカーゴ西日本)
  吉村隆司(エービーカーゴ西日本)
  澤井和樹(ティービー)
  野村康志(ティービー)

 

【平成26年6月25日更新 取材・編集 シンク出版㈱

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