配車・安全管理者研修会を開催 (27年2月)

  平成27年2月14日(土)と2月21日(土)の2週にわたり、物流技術研究会主催の「配車・安全管理者研修会」が開催されました。

 14日はアサヒロジ(株)西宮支店における西日本地区の研修、21日はアサヒロジ(株)本社における東日本地区研修を実施しました。

 配車・運行・安全担当者としての自覚を高め、実務対処を学んでいただく目的で開催され、会員事業所の配車担当者や安全担当者など全体で計30名が受講しました。

 

 西日本地区ではアサヒロジ(株)西宮支店で広いスペースが確保できたので、ドライバー研修で行う「急ブレーキと知覚時間の体験実技」を実施したほか、「フォークリフト・愛車運動」の現場視察も行いました。また東日本地区では事故事例を元にした再発防止策のグループワークを行いました。日頃、配車業務だけに集中していることが多いので、ドライバーやフォークマン、協力会社の立場にたった視点を持ち、物流・運送の現場が抱える問題点と、これからの配車マンの役割を実感してもらうことを主眼としました。

 

 平成27年2月14日 西日本地区 受講者19名

 平成27年2月21日 東日本地区 受講者11名

■平成27年2月14日 西日本地区 於:アサヒロジ(株)西宮支店

■社会が求める配車担当者の使命と責任

 まず、午前中の座学では、宮本秀俊会長(アサヒロジ(株)安全企画推進部 部長)から、「配車担当者の安全管理と知っておきたい基礎知識」を伝えました。

 

■運転者教育の見直しがすすむ意味は?

宮本 国交省が運転者教育の見直しを進めています。これは、中型トラック免許が緩和され、今後は、若い新入社員でも一部の中型自動車がすぐに運転できるようになりますが、その反面、安全への規制が厳しくなるということです。

 デジタコの義務付け範囲も広がり、運行に関して「ごまかし」が効かなくなっています。

■改善基準違反で30日の事業停止処分も!

 また最近、改善基準告示の違反などを根拠に30日間の事業停止処分を受けた運送会社があります。実運送をしている運送会社にとって、これは死活問題であり、「安全のルールを守れない企業はこの業界から退場してもらう」という当局の意思表示です。

 利用運送事業をしている配車担当者にとっても他人事と思ったら、大間違いです。協力会社やドライバーがいなくなるという危機感を持ってください。

 

 「改善基準告示」は時間管理の基本です。配車の皆さんも「そんなことは知らん」ではなく、ドライバーの拘束時間などに気を配り、コンプライアンスを守る協力会社と安全を優先するドライバーを共に育てていく姿勢を持っていただきたいと思います。

■円滑かつ安全な運行を生み出す配車マンに

 日常業務のなかで、円滑・迅速な配車を求められていると思います。それも大切ですが、実運送のドライバーに過度な要求をして、もし重大事故が発生すれば、元請けの配車が捜査上で事情聴取を受けることもあります。

 ひとたび、過労運転のため居眠り死亡事故などが発生すれば、実運送会社は廃業し運転者は懲役実刑といったケースも少なくありません。配車マンは安全への責任を自覚することが求められています。

 

■事故報告規則、教育の11項目などを教えられますか?

  皆さんは「事故報告規則」や「運転者の指導・監督11項目」などについて知っていますか?実運送会社の責任だと言ってしまえば、それまでですが、それらの会社の管理者も忙しく、教育を受けていない方も多いのが実情です。皆さんは金儲けのことだけでなく、人間として安全について勉強して、アドバイスすることが重要です。国土交通省への報告事故であれば「運輸支局に報告しておかなければいけない」と指摘することができなくては。

 安全・品質について真剣にアドバイスする配車担当者こそ、協力会社やドライバーから信頼を受けるのです。

■声掛けキャンペーンと愛車運動

宮本 私の会社(アサヒロジ(株))では、現在、「安全声掛けキャンペーン」と「愛車運動」に力を入れています。

 「声掛け」は、協力会社のドライバーやリフトマンに対する「上から目線」を正し、「ご苦労様」、「気をつけてね」と自社の同僚に接するのと同じように、人を大切にしていく姿勢を持とうというものです。その第一歩が温かい声をかけることです。

 

 愛車運動は、美化運動ではありません。フォークリフトを塗装することは、活動のスタートラインです。自分のフォークリフトを自分のマイカーのように思う気持ちを持って、大切に扱うようになります。

 塗装したフォークリフトを無傷で維持するには、これまで個々に推進してきた「5S」「KYT」「指差呼称」「レイアウトの見直し/導線の見直し」、危険箇所での「徐行・一旦停止・確認」励行等、施策をパッケージにする必要があります。

 また、この運動は、「仲間意識/怪我をしないさせない」をコンセプトとした管理者のリーダーシップと現業の方々のボトムアップな活動がポイントとなります。

■愛車運動の現場も見学

 座学のあとは、アサヒロジ(株)西宮支店樣のご協力を得て、全員が同社の小松滋生さんより、愛車運動の活動について現場で説明を受けました。


 ピカピカのフォークリフトと「5S」・「レイアウト」・「一旦停止箇所の明記」など、具体的な活動の実態を目にすることができました。

 


■急ブレーキ、知覚時間などの実技研修も実施

 午後からは、屋外のコースに移動して乗用車5台を使用した「知覚時間・急ブレーキ」実技と「シートベルト着用体験」実技の研修を行いました。

 実車に乗る前に、青柳修治専任講師((株)JR西日本マルニックス)が、この研修の目的と意義について説明しました。

 

青柳 本日はドライバーの運転行動=認知・判断・操作のなかで、人間としての認知の時間、知覚に要する時間について学ぶため、危険回避に挑戦していただきます。

 時速40キロを超えると、歩行者の死亡事故率が非常に高くなることがわかっていますが、今日は、時速40キロの速度を維持して回避訓練をやってみましょう。

 40キロ走行時の停止距離あるいは安全な車間距離として「22m」という数字を聞いたことがあると思います。その距離のところで仮信号が合図を出しますから、左右への回避、または急ブレーキを踏んでください。


 危険回避・急ブレーキの実技研修では、皆、脳内の知覚時間があるために反応がギリギリとなり、パイロンをはね飛ばす受講者も少なくありませんでした。

 また、実際にドライバーが公道で確保している車間距離の状況を体験するため、危険対象との距離を約17mに近づけることで、実走行の車間距離がいかに危険であるかも実感しました。さらに、時速30キロに落とした体験も行いました。このことで、わずか10キロでも大きな操作の余裕が生まれることを実感できました。

 

青柳 今日は、人間の脳が持つ限界=0.7秒の世界を体験して貰いました。どんなに優秀なドライバーでも、脳が危険を知覚するには0.7秒の時間が必要であり、速度が速ければ速いほど、進んでしまう距離も大きいので、危険を回避する余裕を失います。このことが理解いただけたでしょうか?

 時速を10キロ落とすだけでも全然違いましたね。自身の運転時はもちろん、プロのドライバーの方にも伝えてあげることが大切です。

 

 また、後部座席シートベルト非着用の場合にどれだけの衝撃があるか、時速10キロ以下で急停止して、身体が前の座席に衝突しそうになることも体験しました。

 机上の研修だけでなく、車を使用した現場での実習が配車担当の皆さんには新鮮だったようです。ドライバーの気持ちになって今後の配車の業務にあたってほしいという研修の意図が伝わりました。

■無理をして運行するドライバーを褒めるのは危険

 最後に、丸山利明講師(タカラ物流システム(株)安全品質環境推進室長)より、安全・品質面でもっとも重要な居眠運転の防止対策のほか、安全運転ハンドブック(物流技術研究会監修)を活用した研修が実施されました。

 

 丸山講師は、午前中の会長の講義を受けて、まず居眠運転・過労運転防止で重要なことは「延着してもドライバーを責めないこと」「逆に眠たいのを我慢し無理をして到着したドライバーを不用意に褒めないこと」の重要性を指摘しました。

 

丸山 運送会社も荷主も延着を嫌います。眠たいのに我慢して走行し、何とか時間前に着いたドライバーを褒めてしまうということはよくあると思います。しかし、これは無理な運転を奨励していることになります。そのドライバーにとっては誤った成功体験になり、他のドライバーも「無理をしても行かなあかんのやな」と感じてしまい、皆がそっちの方向に走り出してしまう。これは安全風土を構築するのとは逆方向なのです。

 むしろ「なんでそんなに早く到着できたんだ?」と聞かなくてはならないのです。

 実際に無理をして眠いのに運転しているドライバーは、運転中のウトウトと居眠りを経験しながら、3回目に目が覚めてやっと「これは危ない」と感じてサービスエリアに入って休憩しているというのが実態です。

 

 ですから、当社では自社はもちろん協力会社のドライバーに対しても、眠くなったら「勇気を持って寝るドライバー」こそが安全品質の高いドライバーだと評価しています。電話1本入れてくれたらいい。事務所から先方には連絡しとくから、といって積極的に寝ることを奨励しているのです。

■安全運転ハンドブックの活用を促す

丸山 安全運転ハンドブックは物流技術研究会が監修して発行されました。指導的なドライバーを対象にして「安全運転」や「トラブル対処法」をわかりやすく解説した単行本です。後輩の運転指導などを行う人にとって非常に役立つ内容ですが、配車担当者もこうした実務的な知識を踏まえることは重要です。

 

 とくに、右ページにある「プロとして知っておきたい知識」が参考になります。

 「もらい事故」だと思ったのに厳しい過失相殺を求められた進路変更時の事故事例があります。また、ライトを下向きにしていて何億円もの損害賠償を求められた判例なども知っておくと、ドライバー指導に大変役に立ちます。

 現場で問題に対処するのはドライバー本人ですが、配車担当者の皆さんが正しい知識をもち、彼らの立場に立って考えることが、重要なサポートとなることを自覚してください。

■平成27年2月21日 東日本地区 於:アサヒロジ(株)本社

■東日本地区の研修では、事故事例をもとにグループワークを実施

 続いて、2月21日に実施されたアサヒロジ(株)本社における東日本地区研修も、座学に関しては西日本地区と同様の内容でしたが、屋外コースでの実技の代わりに、グループワークによる事故事例研究会を実施しました。

 

 町田慶太事務局長(サントリーロジスティクス㈱安全推進部長)が研修の講師となり、数人ごとの小グループに分かれて、話し合いました。


 今回テーマに設定したのは以下の労災事故です。

 事故事例:荷降ろし作業中のフォークリフトと

      ドライバーが接触しドライバーが負傷

事故の発生状況】

 ①フォークマンはトラックからの入庫作業を実施

 ②ドライバーはフォーク作業をパースで見ていた

 ③隣のパースのドライバーがドライバーに声を

  かけ呼びつけた

 ④ドライバーが隣パースに移動する時、後方走行

  のフォークリフトに接触した


現場情報】

 ①溢れ倉庫として、事故発生1か月前から稼働

 ②稼働計画より早く製品が入庫してきた(2週間前)

 ③フォークマンは、別倉庫の従業員で、応援で前日

  から作業していた(経験2年)

 ④ドライバーは倉庫業者と同じ会社のドライバー

■背景要因(真の事故要因)の分析をすすめる

 事故原因分析では、単純な直接原因だけでなく、事故が起こった背景要因を追及するように促しました。

 分析のポイントは以下の点です。

 ①フォークリフト、ドライバー、管理面別に

  背景要因を協議

 ②なぜなぜ分析で深く追及する

 ③最重要な要因をグループでまとめる

 ④模造紙に書き出して整理する

 

 各グループで話し合った分析結果を、最後にグループ代表者が発表しました。


■愛車運動について紹介

 なお、研修の場を利用してアサヒロジ(株)で実施している「愛車運動」について、同社・安全企画推進部の清家浩貴課長が発表しました。

 

 愛車運動は単なる美化運動ではありません。

 今までもフォークリフト事故防止として、KYT、5S、危険箇所マップなどさまざまな活動を実施してきましたが、それらの安全活動を一つに束ねて統合する相乗効果があり、事故削減に結びついていることが強調されました。

 すべてのプログラムが終了後には、修了証を手渡し、研修の幕を閉じました。


宮本 物流技術研究会の発行する修了証ですが、社外の講習を受けたという証拠ですから、安全性優良事業所の申請にも活用できますし、あなた達自身の勉強の成果として受け取っていただけたら幸いです。

 本日は長時間お疲れ様でした。この後は、懇親会で自由に歓談し親睦を深めましょう。

■懇親会で親睦を深める

 研修メニュー終了後には、恒例になっている懇親会が開かれました。


 配車担当者は、普段は電話で話をしていても顔を合わすことが滅多にないので、この懇親会は配車担当者同士の格好の交流の場となりました。お酒がすすむにつれて、参加者同士が名刺交換をしたり、情報交換を行って親睦を深めました。



 

【配車・運行・安全担当者研修会データ】

 

<西日本地区> 平成27年2月14日(土)

<場所>    アサヒロジ(株)西宮支店

<参加者>

 7社19名(他にスタッフ・見学者5名)


<東日本地区> 平成27年2月21日(土)

<場所>    アサヒロジ(株)本社

<参加者>

 7社11名(他にスタッフ・見学者3名)


【平成27年2月27日更新 取材・編集 シンク出版㈱

物流技術研究会公式サイト