ドライバー・インストラクター養成研修を開催 (H28年11月)

 物流技術研究会では、さる11月6日(日)および20日(日)、東日本・西日本地区でそれぞれドライバー・インストラクター養成研修を開催しました。

 

 東日本地区は(株)日立物流の松戸研修所を会場に、西日本地区はアサヒロジ(株)箕面営業所を会場にして、合計で38名のドライバーが参加しました。

  今回は、新しいプログラムとして、「指差呼称の必要性とトラック荷役時の安全作業」と題する研修が実施されました。

 

 また、ブリジストンタイヤジャパン(株)の協力により、「タイヤの正しい使用と管理について」と題して、実際の大型タイヤ使用によるタイヤ交換の実演など、実践的な講習が行われました。

 


■トラックドライバーに期待するもの

 開会の挨拶と、参加者・講師の自己紹介の後、宮本講師が「トラック業界に期待される役割」と題して、事業所のリーダードライバーに求められる心構えについて、講習を行いました。

 

■研修は会社の愛情表現

宮本 皆さん、休日に遠方から研修を受けに来られるのは大変でしょうが、会社があなた方を研修に派遣したのは、「会社の愛情表現」だと考えて、誇りに感じて頂きたいのです。

 会社は「どうでもいい人」を研修に派遣しません。こういう研修に出ることは会社のため、そして自分自身のためにとても大切であり、期待されているということを自覚してください。

 

 さて、今年も事業用自動車で重大な事故が2件発生しています。

 一つは、1月15日に軽井沢で発生したスキーバス転落事故、もう1件は3月17日に山陽自動車道トンネルでトラックが起こした居眠運転事故です。

 

 バス事故の方は、事故を起こした観光バス会社と旅行業者に対して同じプロ事業者として、強い憤りを感じます。

 健康診断も未実施で大型の運転経験のないドライバーに運転させるなど、「金儲け」のためだけに車を動かしているとしか思えないからです。ドライバー・お客様の命を大事にする姿勢がまったく見られません。

 

 トラック事故の事業者も、健康診断が実施されていない、過労運転、安全教育もしていないなど、運転者や管理者が逮捕されて仕方のない状況です。

 

 この2つの事故のことを忘れたら、事故防止、安全確保はできないと思います。それほど重要な意味があります。こういう会社ではいけない。こういうドライバーではいけない、という意識をもって、皆さんもインターネットなどで調べて、会社で紹介してください。

 

■安全は点呼に始まり点呼に終わる

 国土交通省の監査の指摘事項の10項目を紹介します。トップは「点呼」です。点呼ができなくて何ができるのかということです。このほか健康保険などの未加入、定期点検記録、健康診断などが続きます。

 皆さんも指導的ドライバーとして、自社の実態を見て、この10項目くらいはできているかチェックする姿勢を身につけてください。

 

 「指導・監督の指針」や 「労働時間の改善基準」についても同じです。

 無理な運行を指示する配車担当者に対して、安全運転するためにはこんな無理な運行は受けられません、拘束時間が16時間超えますから行けませんと言えるぐらいのドライバーになっていただきたいのです。

 

■安全運転ハンドブックを紹介

 最後に、宮本講師は物流技術研究会の監修した「真のプロドライバーを育てる安全運転ハンドブック」をテキストにして講習を行いました。

 

宮本 ハンドブックは208頁ある単行本ですから、そのなかから「プロとして知っておきたい知識」というコラムを中心に、いくつか役立ちそうな情報を指摘します。

 

・納品時間に遅れで嘘をつくドライバー──こんな人はいないと思うけれど、電話1本入れて「何時ごろ着きます」と言えるドライバーになってほしい。

・挨拶のできない人間はプロドライバーになる資格なし──挨拶という漢字には「開いて迫る」という意味があります。本当に偉い人は目下の者にも丁寧な挨拶をします。自分をきちんとアピールすることができない人に、荷物を任せる人はいない。

・エンジンを切るとブレーキが効かなくなる──坂道でニュートラルにするのはエコドライブと勘違いしている人もいる。エンジンブレーキが効かなくなる恐れを知らない人もいるので指導してほしい。

 

 こうした知識は運行管理者だけでなく、皆さん自身がリーダードライバーとして、ぜひ現場の仲間のために身につけてほしいのです。

■指差呼称と荷役時の安全作業

 座学終了後に階下のコースに出て、鶴田 秀樹講師(キリングループロジスティクス、安全品質環境室)から、午前中は「指差呼称」と「荷役時の安全作業手順」について実技研修を受けました。

 

 この体験実技は、次の2つが重要なポイントとなりました。

 

・いつでも、どこでも正しい指差呼称を実践できるようになることで、安全確認を確実に行えるように習慣づける

・転落事故の危険を身を持って知り、自分の命と身体を守る能力を身につける

 

 鶴田講師は、メーカーの製造現場で培った労働災害防止の教育ノウハウを駆使して、まず、ドライバーインストラクターに、指差呼称の正しい方法について指導しました。

 

 参加者も呼称運転などを知っている人はいるものの、厳密に皆で輪になって唱和する呼称や、確実に指差す方法などは体験が薄く、非常に参考になりました。

 また、ヘルメットの確実な装着方法も知識としては知っていても、身についていない人もいて、再認識するよい機会となったようです。

 後半は、ダミー人形とカボチャなどを使った転落実験です。下から見上げると、トラックの荷台は意外に高く、あおり歩きから落ちるとき、ダミー人形は足や手の関節が大きくねじれるなど、強いダメージを受けることがわかりました。

 

 また、かぼちゃを人間の頭に見立てた実験では、かぼちゃがほぼ人間の頭部と同等の重さであることを確認して、荷台から落下させました。まず何の防御もない常態で落下させ、続いてヘルメットをきちんとつけた落下です。

 

 最初の落下では、かぼちゃにヒビが入り、人間の頭部に大きな損傷を受けることがイメージできました。

 

 ヘルメットを顎紐などきちんと装着したかぼちゃは何の損傷もなく、済みました。

 

 この実験を通じて、鶴田講師が感想を聞いたところ、多くのインストラクターが、絶対にヘルメットは重要だ。これからは必ず装着します。と述べていました。

 


■タイヤ異常に気づく点検手法

 その後、午後からは2つの班に分かれ、交替でタイヤ異常に絞った日常点検整備の実技研修を受けました。

 

 この実技は、次の3つが重要なポイントです。 

  • 日常点検でタイヤの異状をチェックできるようになる
  • タイヤの空気圧をハンマーと音で見極める

  • ボルト・ナットの緩みを指先で感じ取れる力をつける

 ブリヂストンタイヤのスタッフの協力により、3台のトラックにさまざまな不具合トラップが仕組まれましたが、2人のドライバーが完全に不具合箇所を報告するなど、優秀な点検成績を収めました。

 

 とくにタイヤの空気圧は、音の変化による異状をチェックするにはハンマーの使い方が重要になるため、繰り返し練習する姿が見られました。

■危険回避の研修

 タイヤを中心とした点検実技研修と並行して、「危険回避・シートベルト」の研修を体験しました。

 

 危険回避研修では、時速30キロと時速40キロの二通りの速度で走行し、擬似信号機による合図で危険回避行動を体験しました。

 この研修では、人間の脳内で発生する知覚反応時間を要するため、瞬間反応は物理的に無理であること、スピードを落とすことで判断・操作の余裕が生まれることを学びました。

 

 受講者は、皆、わずか時速10キロでも、操作の余裕が生まれることで、危険回避に大きな違いがあるということが実感できたようです。

 

 このあと、シートベルト非着用の体験を行いました。低速でも急ブレーキをかけると大きなGがかかるため、シートベルト非着用の場合は身体が大きく前のめりになります。順番に車の後部座席に座って、ベルト非着用の危険を実感しました。

■タイヤの正しい使用と管理

 これらの実技研修の後には、タイヤメーカーのブリジストンタイヤジャパン(株)から専門家を招いて、「タイヤの正しい使用と管理/脱落事故防止について」と題した研修が行われました。

 

 まず現場コースで、専門の技術員によるタイヤの交換実技が行われ、トルクレンチによる増し締めの方法などを見学しました。

 

 とくに冬前時期はスタッドレスタイヤへのタイヤ交換時にボルトの増し締めを忘れて、締めつけ不良から脱輪事故が発生しやすいことなどを指摘しました。

 

 その後、研修ルームに戻って座学を行い、映像でタイヤへの空気充填時にタイヤがバースト・爆発する事故の危険を解説しました。

 

 ダミー人形とはいえタイヤ破裂で吹き飛ばされるショッキングなバースト映像を見て、受講者の皆さんはタイヤ整備にも危険があることを身にしみたようです。  

 


■研修のカリキュラム(西日本)

時 間  研修内容
 09:00~ 09:30  挨拶・自己紹介
 09:30~ 10:30

トラック業界に期待される役割

 ──安全運転ハンドブックを活用した座学──

 ★宮本 秀俊 講師(アサヒロジ(株))

 10:30~ 12:00

 指差呼称の必要性とトラック荷役時の安全作業

 ★鶴田 秀樹 講師(キリングループロジスティクス)

 12:00~ 13:00  昼食休憩

 13:00~ 15:00(1→2班)

 各判別にタイヤ異常に気づく点検
・日常点検で気づくべき異常

・タイヤ空気圧、異物、ボルトの緩みなど

 ★ブリジストン 派遣講師

 13:00~ 15:00(2→1班)

 各判別に危険回避/急ブレーキ研修
・危険回避(信号機使用)

・シートベルト着用効果

 ★町田 慶太 講師

 ★物流技術研究会 インストラクター

15:00~ 16:00

タイヤの知識
・タイヤの正しい使用と管理
・脱落事故防止について(ボルト・ナット締め実演)

 ★ブリジストン 派遣講師

16:00~ 16:30

・本日の講習まとめ/質疑応答

・アンケート ・修了証授与  → 閉講

 

【平成28年 ドライバーインストラクター養成研修データ 物流技術研究会

 

<日時>

  平成28年(2016年)11月6日(日)、20日(日)

 

<場所>

  (株)日立物流  松戸研修所

  アサヒロジ(株) 箕面営業所

 

<参加者>

  受講者 東日本地区20名 西日本地区18名  

  会社名(順不同)

    エービーカーゴ東日本(株)/エービーカーゴ西日本(株)/アサヒロジ株)/

    ティービー(株)/大塚倉庫(株)/ケーエルサービス東日本(株)/ケーエル

    サービス西日本(株)/ケーエルサービス九州(株)/サントリーロジスティ

    クス(株)/海邦物流(株)/両備ホールディングス(株)/DNPロジスティ

    クス(株)/常磐海運㈱/(株)榮興運/(株)山上運輸/嶋崎運送(株)

 

 

<講師・インストラクター(敬称略・順不同)> 

  岡 義人(キリングループロジスティクス)

  宮本 秀俊(アサヒロジ)

  町田 慶太(サントリーロジスティクス)

  鵜川  誠  (サントリーロジスティクス)

  山田 理絵(大塚倉庫)─司会

  鶴田 秀樹  (キリングループロジスティクス

  八幡 篤(キリングループロジスティクス)

  石井 潤(ケーエルサービス東日本)

  野村 康志(ティービー)

  須郷   浩 (ティービー)

  太田 清史(ティービー)

  小野塚 英雄(バンテック)
  八幡 大輔(バンテック)

  鈴木 一哉(バンテック)
  佐々木 健一(バンテック)

  小山 雄一(バンテック・イースト)

  森井 満夫(エービーカーゴ西日本)

  田中 保之(エービーカーゴ西日本)

  吉村 隆司(エービーカーゴ西日本)

  宮内 辰也(エービーカーゴ西日本)

  井上 友和(エービーカーゴ西日本)

           

■フォトギャラリー

 

【平成28年12月16日更新 取材・編集 シンク出版㈱

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