ドライバー・インストラクター養成研修を開催(H29年6月)

 物流技術研究会では、さる6月11日(日)と25日(日)、西日本・東日本地区でそれぞれドライバー・インストラクター養成研修を開催しました。

 

 西日本地区は、アサヒロジ(株)箕面営業所を会場に、東日本地区はキリングループロジスティクス(株)の湘南支店を会場にして、合計で27名のドライバーが参加しました。

 

  今回も、座学と実技を組み合わせた研修で、「安全運転の為の基礎知識」「指差呼称の必要性とトラック荷役時の安全作業」「タイヤ異常に気づく点検手法」「知覚時間体感と危険回避研修」などが実施されました。

 

 また、ブリジストンタイヤジャパン(株)等の協力により、「タイヤの正しい使用と管理について」と題して、実際の大型タイヤ使用によるタイヤ交換時のジャッキアップの指導など、実践的な講習が行われました。

 


■トラックドライバーに期待するもの

 開会の挨拶と参加者・講師の自己紹介の後、宮本講師が「安全運転の為の基礎知識」と題して、リーダー的なドライバーに求められる心構えについて、講習を行いました。

 

■ボトムアップは人材育成から

宮本 「安全」とか「品質」というものは人材育成から始めていかなければいけないと思います。

 運送業界の現場で運転者教育ができる人を育てていくことが、ボトムアップにつながり、安全品質を高めていきます。

 

 人に教えるためには知識を得ないと何もできないので、皆さんはこうした研修の機会をとらえて知識を吸収し、また、自分自身でも勉強を続けてください。

 

 例えばよく運送事業に対する「監査」が厳しくなったと言われますが、監査は何のために行われるのか、監査でチェックされるのはどんなことなのか、ということが配布した資料の中にあります。監査のチェック項目のトップは点呼と書いてあります。

 監査で問われるから点呼をしようではなくて、点呼は皆さんの安全を守るためです。

 

 事故をして辛い思いをするのはドライバー自身であり、責任を取らされるのもまずドライバー自身だからです。

 

 ですから、安全について教える皆さんは、こうした監査の実態なども知っておく必要がある。人に教えるというのはそういうことです。

 

■安全運転ハンドブックを紹介

 また、宮本講師は物流技術研究会の監修した「真のプロドライバーを育てる安全運転ハンドブック」をテキストにして講習を行いました。

 

宮本 このハンドブックは当たり前のことが書いてありますが、「プロとして知っておきたい知識」というコラムを中心に、いくつか皆さんの役立ちそうな情報を共有したいと思います。

 

・「自分は悪くない」と思っても責任を負うのが事故!青信号

 でも事故にあったらトラックは負けです。保険では、2割は過

 失があるという前提で始まります。相手が100%悪いなんてあ

 りえないということを自覚させてほしい。

・挨拶の基本──当社ではよくトリプルAと言っていますが、「安全」「挨拶」「ありがと

 う」これがドライバーの基本です。お客様に選ばれるドライバーになってほしい。

・ユニホームは黄金の服─会社のユニホームに誇りを持ってほしい。プロ野球のユニホー

 ムと同じです。誰でも着られる服ではないということ。会社と仕事にプライドを持つこと

 で、ドライバーの姿勢も変わってきます。

納品時間に遅れるのに嘘をつく──今時こんなドライバーはいないかも知れない。しか

 し、人手不足で様々な人を採用する時代。もう一度気を引き締めて、荷主の信頼を失う

 ことが無いように教育してください。

ウイング車のオイル漏れ──オイル漏れ、燃料漏れをチェックするのは常識、さらにウ

 イング油圧ポンプのオイルが漏れることもあります。こうしたプラスアルファの指摘を

 できるように心がけてほしい。

・眠いときは勇気を持って寝る──プロのドライバーだからこそ、眠いと感じたら仮眠する

 勇気を持たないといけない。事故を起こして人生を失うのはドライバーです。

 

 これから高校卒業したての若者もトラックドライバーになろうとして沢山入社してきます。今説明したような内容に皆さん自身の経験を加味して教えることを目指してください。

 上手に教える必要はないですから、事故を起こしてほしくないという「熱い思い」をもって伝えてください。

■指差呼称の必要性とトラック荷役時の安全作業

 次に午前中は鶴田 秀樹講師(キリングループロジスティクス、安全品質環境室)から、「指差呼称・指差唱和」と「荷役時の安全作業手順」について実技研修を受けました。

 

 この体験実技は、次の2つが重要なポイントとなりました。

 

・いつでも、どこでも正しい指差呼称を実践できるようになることで、安全確認を確実に行えるように習慣づける

・転落事故の危険を身を持って知り、自分の命と身体を守る能力を身につける

 

 呼称運転などを知っている人はいるものの、全員で輪になって唱和する呼称や、確実に指を差す方法などは体験がない人が多く、非常に参考になりました。

 

 また後半は実際に屋外に出て、トラックのウイングを上げて荷役作業を想定し、ダミー人形による荷台からの転落実験やカボチャを人間の頭に見立てた頭蓋骨骨折実験などを行いました。

 

 転落の危険は

 ・あおり歩き 

 ・ヘリ歩き

 ・荷台端での無理な作業

などを想定して実施しました。

 

 あおりを上げた状態では、幅が2.5cmの狭い場所で作業をしています。あおりの上からだと地上から

 

2m以上の高さからの転落となります。

 あおり歩きから落ちるとき、ダミー人形は足や手の関節が大きくねじれるなど、強いダメージを受けることがわかりました。

 

 また、カボチャを人間の頭に見立てた実験では、カボチャがほぼ人間の頭部と同等の重さであることを確認して、荷台から落下させました。

 まず、ヘルメットをきちんとつけた落下実験の後、次に何の防御もない常態で落下させました。

 

 最初の落下では、ヘルメットを顎紐などきちんと装着したカボチャは何の損傷もなく済みましたが、次に、ヘルメットなしでカボチャを落下させたところ、ヒビが入り結局大きく割れてしまいました。人間の頭部に大きな損傷を受けることがイメージできたと思います。 


■タイヤ異常に気づく点検手法

 その後、午後からは2つの班に分かれ、交替でタイヤ異常に絞った日常点検整備の実技研修を受けました。

 

 この実技は、次の3つが重要なポイントです。 

  • 日常点検でタイヤの異状をチェックできるようになる
  • タイヤの空気圧をハンマーと音で見極める

  • ボルト・ナットの緩みを指先で感じ取れる力をつける

 ブリヂストンタイヤのスタッフの協力により、3台のトラックにさまざまな不具合トラップが仕組まれましたが、1人のドライバーは完全に不具合箇所を報告するという優秀な点検成績を収め、記念品の贈呈を受けました。

 

 とくにタイヤの空気圧は、音の変化による異状をチェックするにはハンマーの使い方が重要になるため、繰り返し練習する姿が見られました。

■知覚時間を体験するために危険回避を行う

 タイヤを中心とした点検実技研修と並行して、「知覚時間体感」研修を実施しました。

 

 知覚時間研修では、時速30キロと時速40キロの二通りの速度で走行し、擬似信号機による合図で危険回避行動を行います。

 この研修では、人間の脳内で発生する知覚反応時間を要するため、瞬間的に反応することは物理的に無理であること、スピードを落とすことで判断・操作の余裕が生まれることを学びます。

 

 受講者は、最初は信号センサーを超える位置よりもっと先で信号が変わったと感じていますが、実際に人が歩くスピードでセンサーを超えると、どこで信号が変わるかに気づきます。

 そして、車の走行スピードが速ければ速いほど、知覚時間の間に走行する距離も長いことに気づきます。さらに、たとえわずか時速10キロでも操作の余裕が生まれることで、危険回避に大きな違いがあるということが実感できたようです。

 

 このあと、シートベルト非着用の体験を行いました。低速で急ブレーキをかけると大きなGがかかるため、シートベルト非着用の場合は身体が大きく前のめりになります。

 順番に車の後部座席に座って、ベルト非着用の危険を実感しました。

■タイヤの正しい使用と管理

 これらの実技研修の後には、タイヤメーカーのブリジストンタイヤジャパン(株)から専門家を招いて、「タイヤの正しい使用と管理/脱落事故防止について」と題した研修が行われました。

 

 トラックを使用して、専門の技術員によりタイヤ交換などをする際に、前輪、後輪でジャッキアップをして、タイヤのボルトナットを緩める方法について指導が行われました。

 

 とくに冬前時期はスタッドレスタイヤへのタイヤ交換時にボルトの増し締めを忘れて、締めつけ不良から脱輪事故が発生しやすいことなどを指摘しました。

 

 実際に大型トラックのタイヤ交換をした経験のあるドライバーは1人しかおられず、皆、経験がないので興味深々でした。ジャッキアップの位置を確認したり、ボルトを緩めるときになぜ二段階でジャッキアップするのかを学び、タイヤ交換の難しさを実感しました。

 講師は、「実際に、ドライバーがタイヤ交換をする機会は少なく、整備担当者などに依頼することが多いと思いますが、プロとして知っておくことは大切だと思います」と解説しました。


■研修のカリキュラム(西日本)

時 間  研修内容
 09:00~ 09:30  開会挨拶・自己紹介
 09:30~ 10:30

 安全運転の為の基礎知識

 ──安全運転ハンドブックを活用した座学──

 ★宮本 秀俊 講師(アサヒロジ(株))

 10:30~ 11:10

 指差呼称の必要性

 ★鶴田 秀樹 講師(キリングループロジスティクス)

 11:20~ 12:00

・トラック荷役時の安全作業

・ヘルメットの重要性

 ★鶴田 秀樹 講師

 12:00~ 13:00  昼食休憩

 13:00~ 15:00(1→2班)

 各判別にタイヤ異常に気づく点検
・日常点検で気づくべき異常

・タイヤ空気圧、異物、ボルトの緩みなど

 ★ブリジストン 派遣講師

 13:00~ 15:00(2→1班)

 各判別に危険回避/急ブレーキ研修
・危険回避(信号機使用)

・シートベルト着用効果

 ★青柳修治 講師 他

 ★物流技術研究会 インストラクター

15:00~ 16:00

タイヤの知識
・タイヤの正しい使用と管理
・脱落事故防止について(ボルト・ナット締め実演)

 ★ブリジストン 派遣講師

16:00~ 16:30

・本日の講習まとめ/質疑応答

・アンケート ・修了証授与  → 閉講

 

【平成29年 ドライバーインストラクター養成研修データ 物流技術研究会

 

<日時>

  平成29年(2017年)6月11日(日)、25日(日)

 

<場所>

  アサヒロジ(株) 箕面営業所

  キリングループロジスティクス(株) 湘南支店 

 

 

<参加者>

  受講者 西日本地区12名  東日本地区 15名

  会社名(順不同)

    サッポロ流通システム(株)/中野運送/エービーカーゴ西日本(株)/

    ケーエルサービス西日本(株)/(株)農協物流/(株)バンテックセントラル/

    (株)トラスト/(株)DNPロジスティクス/エービーカーゴ東日本(株)/

    アサヒロジ(株)/ハイエスサービス(株)/共同物流(株)/ケーエルサー

    ビス東日本(株)/

   

 

<講師・インストラクター(敬称略・順不同)> 

  青柳 修治(物技研専任講師/JR西日本マルニックス)

  町田 慶太(サントリーロジスティクス)

  宮本 秀俊(アサヒロジ)

  岡  義人(キリングループロジスティクス)

  山口 勝義(大塚倉庫)

  杉浦 隆正(アサヒロジ)

  井澤 彰信(サッポログループ物流)

  村松 寿昭(サッポログループ物流)

  西村 明良(サッポログループ物流)

  鶴田 秀樹  (キリングループロジスティクス

 

  野村 康志(ティービー)

  古谷 俊之(エービーカーゴ西日本)

  吉村 隆司(エービーカーゴ西日本)

  佐々木 健一(バンテック)

  石井 潤   (ケーエルサービス東日本

 

  飯田 浩之  (ケーエルサービス東日本)

 

  中島 篤哉(サントリーロジスティクス)

  鵜川 誠 (サントリーロジスティクス)

  *ブリヂストンタイヤジャパン(株)/ブリヂストンタイヤサービス(株)/三菱商事(株)タイヤ部

 

 

■フォトギャラリー西日本

■フォトギャラリー東日本

 

【平成29年7月7日更新 取材・編集 シンク出版㈱

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